西日本の南を北上した台風15号は東日本の太平洋側に接近しながら北東に進み、24日午前、温帯低気圧に変わった。今後、前線の影響で関東地方や東北地方で大雨が降るおそれがあり、気象庁は、土砂災害や低い土地の浸水、河川の増水・氾濫(はんらん)への厳重な警戒を呼びかけている。
線状降水帯が発生した静岡県内では、9月の月間降水量の平年値を超える大雨に見舞われた。降り始めの22日午前5時から24日午前6時までに、静岡市で419・5ミリ、藤枝市で410ミリ、浜松市で349ミリなど県中部や西部を中心に猛烈な降水を観測。この大雨による被害が相次いだ。
24日午前0時40分ごろ、静岡県掛川市高瀬のため池に乗用車が転落したと110番通報があった。県警掛川署によると、運転していたとみられる近くの無職井川翔馬さん(29)が救助されたが、搬送先の病院で死亡が確認された。
また、24日午前0時50分ごろ、掛川市遊家(ゆけ)で土砂崩れが発生し、住宅1棟が倒壊したと119番通報があった。市消防本部などによると、家屋から会社員の山崎悟司さん(45)を発見したが、死亡が確認された。市内の全域に避難指示が出され、42カ所に避難所が開設された。
浜松市天竜区緑恵台では、24日午前0時ごろに土砂崩れが発生し、住宅3棟が巻き込まれた。県警天竜署によると、全員救出されたが、男性(63)、女性(41)の夫婦と息子(9)の家族3人がけがをしたが命に別条はないという。
浜松市天竜区二俣町二俣では24日午前2時ごろ、二俣川にかかる嘯月橋(しょうげつばし)の一部が増水で流された。市によると、長さ32メートルの橋桁のうち12メートルと橋脚1本が流れて損壊した。けが人はいなかった。下流側約180メートルの箇所に迂回(うかい)路があり、孤立している集落はないという。
川根本町下泉の町道では、24日午前2時50分ごろ、「道路にできた陥没に車が転落した」と町役場を通じて県警島田署に通報があった。落ちたのは軽トラックで、乗っていた2人のうち、70代男性は自力で脱出したが、運転していた70代とみられる男性の行方がわかっていない。消防や署が陥没した穴を捜索している。
県によると、県内で河川の越水などによる浸水被害や土砂災害も各地で相次ぎ、少なくとも床上浸水被害が21棟、床下浸水が39棟にのぼった。24日午前6時現在、浜松市など約29万世帯、約70万人に緊急安全確保(警戒レベル5)の避難情報が発表されたほか、県中部と西部を中心に、12市町の約44万世帯約108万人に避難指示(警戒レベル4)が出た。
静岡市を中心に停電も相次いだ。中部電力によると24日午前7時現在、静岡県内では静岡市や藤枝市、磐田市、掛川市などで約12万戸が停電した。土砂崩れや道路の冠水などで点検に時間がかかり、復旧の見込みは未定という。
交通への影響も出た。23日夜、東海道新幹線は東京―新大阪で運転中止になり、東京駅のホームにJR東海が用意した新幹線の「列車ホテル」で一夜を明かした人もいた。22日から1泊2日の旅行に来ていた大阪府の会社員松田愛美さん(37)と小川風子さん(28)は一晩、列車の座席で体を休めた。
松田さんは「ずっと座った姿勢なので体が痛くて、なかなか眠れなかった」。小川さんは「新幹線が動かない限りは帰りようがない。待つのも疲れました」と話した。
24日朝になってJR東海は、東海道新幹線は始発から正午ごろまで、東京―三島間と名古屋―新大阪間で折り返し運転を行うと発表。24日正午ごろまでは「のぞみ」と「ひかり」はすべて運休し、東京駅の改札前には、再開を待つ人が集まった。
都内から名古屋へアイドルの「卒業コンサート」に向かう予定の40代男性は、改札の前で再開を待っていた。「一度しかない舞台で春に決まったときからずっと心待ちにしていた。なんとしても会場に行きたい」と話した。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル